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55年の時を超えて灯る「和ろうそく」の炎。パックンが愛媛・内子で見つけた、失われない日本の美学

目次

1. 導入:55年続く旅情の極み『遠くへ行きたい』の魅力

日曜の朝、まだ街が静まり返っている時間帯に流れるあのテーマ曲。デューク・エイセスの低音ボイスが響く「遠くへ行きたい」のメロディを聞くだけで、私たちの心は日常を離れ、見知らぬ土地の駅舎や、湯気の立つ朝市へと誘われます。1970年の放送開始から実に55年。この番組が単なる「観光ガイド」に終わらず、日本最長寿級の旅番組として君臨し続けている理由は、そこに流れる「時間」の重みにあります。

今回の舞台は、愛媛県内子町。町の8割を深い緑が占めるこの場所は、江戸から明治にかけて木蝋(もくろう)の生産で栄えた豪商の町並みが今なお息づく、タイムスリップしたかのような空間です。案内人は、ハーバード大学卒の知性派でありながら、日本の文化を心から愛するパトリック・ハーランさん、通称「パックン」。

彼が今回この地を訪れたのは、単なる物見遊山ではありません。番組が55年という歳月をかけて積み上げてきた「過去の記録」を手に、かつて番組が取材した職人の足跡を辿るという、非常にエモーショナルな旅なのです。パックンの鋭くも温かい視点を通して、私たちは「里山の暮らし」の中に潜む、真の贅沢とは何かを再発見することになります。


2. 放送概要と舞台「愛媛県内子町」のプロフィール

今回の放送は、**2026年4月5日(日)午前7:00〜7:30、中京テレビ(Ch.4)**にてオンエアされます。日曜朝の30分間、テレビ画面は愛媛の鮮やかな新緑と、歴史ある町並みのコントラストで染め上げられます。

舞台となる愛媛県内子町は、松山市から南西へ約40km。重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「八日市・護国」の町並みは、約600メートルにわたって黄土色の漆喰壁や大壁造りの商家が並び、当時の繁栄を今に伝えています。パックンが歩くその道は、かつて「内子蝋」として世界にその名を轟かせた職人たちのプライドが詰まった道でもあります。

番組では、この歴史的な町並みからさらに一歩踏み込み、町の面積の8割を占めるという「森林」のエリア、すなわち内子の深部へと向かいます。そこには、観光パンフレットには載りきらない、等身大の「内子の日常」が待っています。パックンが手にする旅の栞には、55年前の取材メモが記されているのでしょうか。新旧が交差する内子のプロフィールを、映像を通して多角的に紐解いていきます。


3. 番組の歩みと制作秘話:半世紀を超える「発見」の歴史

『遠くへ行きたい』の制作スタイルは、徹底して「人」にフォーカスすることにあります。1970年10月、永六輔さんの旅から始まったこの番組は、当時から「有名人が観光地を紹介する」という既存の枠組みを嫌い、市井の人々の暮らしに分け入るドキュメンタリー的な手法を貫いてきました。

制作秘話として語り継がれているのは、スタッフの「徹底したロケハン(下見)」の凄まじさです。ネットがなかった時代から、スタッフは現地を歩き倒し、面白い人、守るべき技術、語られるべき物語を見つけ出してきました。今回の内子ロケにおいても、その「執念」とも言えるリサーチ力が光ります。

特筆すべきは、番組アーカイブの活用です。55年という歴史があるからこそ、「かつて訪ねた場所を、数十年後に再訪する」という演出が可能になります。今回の放送でも、古い資料映像と現在の風景がオーバーラップする瞬間、視聴者は「時間は流れても、変わらない精神がある」という事実に胸を打たれるはずです。この「時間の堆積」こそが、他の追随を許さない『遠くへ行きたい』の圧倒的なブランド力なのです。


4. 旅人・パックンの鋭い視点と役割

旅人としてのパトリック・ハーランさんは、実に稀有な存在です。お笑いコンビ「パックンマックン」としての軽妙なトークはもちろんですが、彼の真骨頂は「異文化をリスペクトしつつ、論理的に分析する力」にあります。彼が日本の伝統工芸を前にしたとき、放たれる言葉は単なる「すごい」「綺麗」には留まりません。

「なぜこの技術が生まれたのか?」「なぜこの形である必要があるのか?」という本質的な問いを、職人にぶつけていきます。その姿は、まるでハーバードの講義で学生が教授に問いを投げかけるかのようであり、同時に、初めて見るおもちゃに目を輝かせる少年のようでもあります。

また、パックンのコミュニケーション能力の高さは、内子の里山で暮らす人々との交流でいかんなく発揮されます。一見、気難しそうな職人の懐にスッと入り込み、同じ目線で語らう。英語と日本語を自在に操る彼ですが、心と心で通じ合う「言葉を超えた対話」こそが、今回の旅の裏テーマと言えるでしょう。異邦人である彼だからこそ気づく、日本人が見落としている「内子の宝」を、彼は見事に言語化してくれます。


5. 今回のハイライト:内子が誇る「手仕事」と「山の幸」の継承

今回の放送で最も感動的なシーンの一つが、「和ろうそく」職人との出会いです。内子の和ろうそくは、ハゼの実から抽出した「木蝋」を原料とし、芯には和紙やい草の髄が使われます。パックンが訪ねた工房では、200年以上続く伝統が守られていました。

ここで番組は、55年前の記録を紐解きます。当時、番組が取材した職人。その「孫」が、今まさに目の前で蝋を塗り重ねている――。この瞬間のパックンの表情に注目してください。受け継がれる技術、守り抜かれる炎。単なる作業ではなく、先代への敬意が込められたその手仕事に、パックンは「タイムトラベルをしたような感覚」を覚えます。

さらに、山奥で見つけた「黒く輝く芸術品」の正体。そして、内子のもう一つの誇りである「原木しいたけ」。パックンは自ら山に入り、ゴツゴツとした原木から力強く生えるしいたけの収穫を手伝います。菌床栽培とは違う、大地のエネルギーを凝縮したしいたけを、その場で炙っていただく。シンプルながらも、これ以上の贅沢はない「山の幸」の魅力。職人の技と、自然の恵み。その両輪が内子の文化を支えていることを、映像は克明に映し出します。


6. 究極の癒やし:絶景古民家宿で味わう「山の幸づくし」

旅の締めくくりは、内子の山間にひっそりと佇む絶景古民家宿です。築100年を超える建物をリノベーションしたその宿は、古い梁や柱の温もりを残しつつ、窓の外にはパッチワークのような里山の風景が広がります。

ここで提供されるのは、パックンが昼間に収穫したしいたけをはじめ、山菜、川魚など、内子の自然をそのまま皿に盛り付けたような「山の幸づくし」の夕食です。都会の高級レストランでは決して味わえない、水の清らかさと土の香りが漂う料理の数々。

囲炉裏の火を見つめながら、パックンが独白するシーン。そこには、多忙を極める現代人が忘れかけていた「豊かな時間」が流れています。「何もないこと」が、これほどまでに贅沢であるというパラドックス。パックンの知的なナレーションが、宿泊体験の深みをさらに引き立てます。この宿での滞在は、視聴者にとっても「心の洗濯」になること間違いありません。


7. SNSの反響と視聴者の声:なぜこの番組は愛され続けるのか

放送後、SNS(旧Twitter等)では毎回、「#遠くへ行きたい」のハッシュタグと共に、多くの感動の声が寄せられます。「日曜の朝、この番組を見ると一週間頑張れる」「パックンの優しい視点が好き」「内子の和ろうそくの炎を見て、涙が出そうになった」といったコメントが並びます。

特に注目されるのは、20代から40代の若い世代からの支持です。レトロブームやサステナビリティへの関心の高まりから、内子のような古い町並みや、伝統的な「手仕事」に憧れを抱く層が増えています。

「テレビは終わった」と言われる時代に、なぜこれほどまでに熱心な視聴者がいるのか。それは、この番組が「嘘」をつかないからです。過剰な演出を排し、ただそこに流れる空気、人々の息遣いを丁寧に掬い取る。SNSのタイムラインに流れる断片的な情報とは正反対の、「厚みのある時間」を視聴者は求めているのです。パックンの内子旅も、多くの人の「いつか行ってみたい場所リスト」に深く刻まれることになるでしょう。


8. マニアが教える「演出の妙」と視聴のポイント

ここで、番組をより深く楽しむための「マニアックな視点」をいくつかご紹介します。

まず注目すべきは、「手元」のクローズアップです。和ろうそくに蝋を塗る指先、しいたけをもぎ取る力強い掌。本作のカメラマンは、職人の顔よりも「手」に多くを語らせます。手の節々に刻まれた歴史、爪の間に残る土の色。そこに宿る職人魂を、映像は雄弁に物語ります。

次に、「音」の演出です。風にそよぐ竹林の音、和ろうそくの芯がパチッと爆ぜる微かな音、パックンが里山を歩く靴音。スタジオでの収録ではなく、現地の「生の音」を最大限に活かした音響設計が、視聴者を内子の空気の中へと没入させます。

そして、55年前のアーカイブ映像との「対比」です。画面の色味や画角まで計算し、過去と現在を繋ぐようなカット割りが行われることがあります。これに気づいたとき、この番組が単なる旅番組ではなく、一編の「壮大な叙事詩」であることを確信できるはずです。


9. まとめ:受け継がれる「技」と「心」を巡る旅の終わりに

愛媛・内子を巡るパックンの旅は、私たちに多くの示唆を与えてくれました。200年続く和ろうそくの炎は、決して絶やしてはならない「文化の灯火」そのものでした。55年前に番組が訪れた職人の孫が、今も同じ場所で伝統を守っているという事実は、変化の激しい現代において、何にも代えがたい希望のように感じられます。

パックンは旅の終わりに、内子の空を仰ぎながら何を想ったのでしょうか。彼が発した「伝統とは、過去を保存することではなく、火を絶やさないことだ」という言葉(予想)は、私たちの胸に深く突き刺さります。

『遠くへ行きたい』は、これからも日本の隅々まで足を運び、名もなきヒーローたちの物語を紡ぎ続けていくでしょう。今回の内子の放送を見て、もしあなたの心に小さな灯がともったなら、ぜひ今度はあなた自身が「遠くへ」行ってみてください。そこには、テレビ画面越しでは味わえない、生きた日本の息遣いが待っています。

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