1. 導入:秋田の冬、凍れる海に眠る「赤い宝石」を求めて
秋田県の最北端、青森県との県境に位置する八峰町。そこに、知る人ぞ知る豊かな漁場を抱える「岩舘(いわだて)漁港」があります。2026年3月4日放送のBS朝日『魚が食べたい!〜地魚いっぱい!港でごはん。〜』が今回ターゲットにするのは、秋田の荒波が育んだ「脂乗り抜群のマダイ」です。
一般的にマダイといえば春の「乗っ込み」が有名ですが、ここ岩舘には、地元の漁師だけが知る特別なポイントがあります。それは、12月の厳冬期、1年の中でわずか半月ほどの間だけ、深場からマダイが特定の場所に集まってくるという不思議な現象です。
漆黒の海に潜む「赤い宝石」を求めて、番組スタッフは極寒の底引き網漁に同行します。そこには、教科書通りのマダイ漁ではない、経験と勘だけが頼りの「一発勝負」の世界が広がっていました。
2. 放送情報と番組概要:ぐっさんと共に見届ける「一発勝負」の記録
本放送は、2026年3月4日(水) 21:00〜21:54にBS朝日にて放送されました。MCを務めるのは、自身も釣りと料理を愛する山口智充(ぐっさん)。彼の弾けるようなナレーションが、厳しい漁の現場に温かな彩りを添えています。
今回の54分間は、まさに「時間の濃縮」です。冬の秋田の海はシケることが多く、船を出せる日自体が極めて限られています。取材班が密着したこの日は、運良く波が収まったものの、チャンスは文字通り「この1回だけ」。
もし網が空っぽなら、番組が成立しないかもしれない――。そんな緊張感の中、カメラは漁港を出発してから12時間にわたる死闘を追い続けました。ターゲットがマダイからスルメイカ、さらにはボタンエビへと目まぐるしく変わる、秋田最北の底引き網漁のリアルがここにあります。
3. 岩舘漁港の挑戦:1回限りの「超希少な漁」の舞台裏
岩舘の漁師たちが狙うのは、水深100メートルを超える深場に潜む獲物たちです。この時期のマダイは、冷たい海水に耐えるために体にたっぷりと蓄えた脂が最大の特徴。しかし、その群れは極めて小さく、ピンポイントで網を入れなければ出会うことはできません。
「マダイは運。でも、その運を手繰り寄せるのが俺たちの仕事だ」。そう語るベテラン漁師の背中には、長年この過酷な海と向き合ってきた誇りが滲んでいます。網を投げ入れ、船を走らせること数時間。ウィンチが唸りを上げ、巨大な網が海面に姿を現します。
網の中で跳ねる鮮やかなピンク色の魚体。それは、狙い通りの立派なマダイでした。さらに、その脇には透き通るようなスルメイカ、宝石のように輝くボタンエビ、そして巨大なタラが。12時間の労働が報われる、感動の「とれ高」の瞬間です。
4. 船上&番屋メシの極致:漁師だけが知る「一番旨い食べ方」
番組の真骨頂は、獲れたての魚をその場で食す「漁師メシ」です。今回も、視聴者の食欲を限界まで刺激する絶品料理が続々と登場しました。
- 船上のマダイ刺身&ノドグロしょうゆ煮: 獲れたばかりのマダイを、船の上で豪快に捌きます。包丁を入れた瞬間に包丁がベタつくほどの脂の乗り。醤油を弾くほどの弾力は、産地でしか味わえない贅沢です。さらに、外道として混ざったノドグロをサッと醤油で煮付けた一品は、口の中でとろける甘みが絶品です。
- マダイの湯引きとボタンエビの刺身: 港に戻り、番屋で振る舞われたのは、皮目をサッと炙ったマダイの湯引き。皮と身の間にある一番旨い脂が熱で活性化され、香ばしさが鼻を抜けます。ボタンエビは、味噌まで余すことなく堪能。
- チダイの丸々唐揚げ: 小ぶりなチダイを贅沢に丸ごと揚げた一品。骨までバリバリと食べられ、身の甘みが凝縮された唐揚げに、ぐっさんも「これはたまらん!」と絶叫します。
5. 秋田の魂「季節ハタハタ」:沿岸に押し寄せる冬の使者
マダイ漁と並んで今回の大きな柱となるのが、秋田県民が何よりも大切にしている魚、ハタハタです。特に、産卵のために沿岸の浅場へ一斉に接岸してくるものを「季節(とき)ハタハタ」と呼びます。
ハタハタ漁は、雷が鳴り響き、海が激しく荒れる「ハタハタの嵐」と呼ばれる天候の時にピークを迎えます。番組では、このハタハタを狙う定置網漁も徹底調査。網いっぱいに掛かったハタハタの姿は、まさに秋田の冬の風物詩です。
漁師の番屋で頂くハタハタ料理は、シンプルかつ究極。塩焼きにすることで引き出される身のホクホク感、そして噛むほどに旨味が溢れる「ブリコ(卵)」の食感。さらに、通が泣いて喜ぶ「白子」の濃厚な味わい。地元の銘酒の酒蔵を訪ね、その酒と共に味わうハタハタは、もはや一つの文化芸術の域に達しています。
6. 地元の魅力深掘り:銘酒の酒蔵と漁師の番屋
岩舘の町を歩けば、そこには海と共に生きる人々の息遣いがあります。番組では、地元の銘酒を醸す酒蔵も取材。秋田の清らかな水と米で作られた酒が、なぜこれほどまでに地魚と合うのか、その秘密を探ります。
また、漁師たちの憩いの場である「番屋(ばんや)」の文化も紹介されます。ここでは、漁の反省会が行われる一方で、若い漁師へベテランが技を伝える場にもなっています。厳しい自然環境の中で生き抜くためには、このコミュニティの絆が欠かせません。
山口智充さんが番屋に座り、漁師たちと膝を突き合わせて語り合うシーンでは、単なる食レポを超えた、人と人との「温もり」が描き出されます。
7. SNSの反響と視聴者の期待:深夜の「飯テロ」と「感動」
放送中、SNSでは「秋田のハタハタ、取り寄せ決定!」「マダイの脂の乗り方が尋常じゃない」といった声が次々と上がりました。
特に「季節ハタハタ」のシーンでは、秋田出身の視聴者から「実家を思い出す」「冬のこの時期にしか味わえないあの食感が恋しい」といった、郷愁を誘う投稿が多く見られました。また、12時間という長時間の漁に挑んだ漁師さんたちへの敬意を表するツイートも多く、この番組が持つ「現場第一」の姿勢が多くのファンに支持されていることが伺えます。
54分という放送時間があっという間に感じられるほど、映像の力が強く、観終わった後には「とにかく美味しい魚が食べたい!」という欲求が最大化される、最高のエンターテインメントとなっています。
8. まとめと展望:私たちは「命」をいただいている
『魚が食べたい! 秋田・岩舘編』。この番組が教えてくれたのは、私たちが普段当たり前のように口にしている魚の裏側には、漁師たちの命懸けの12時間があるという事実です。
1年にわずか半月しか獲れないマダイ。嵐と共にやってくるハタハタ。それらはすべて、自然が私たちに与えてくれた期間限定のギフトです。岩舘の漁師たちが守り続けるこの海と、そこに根付く食文化は、まさに日本の宝と言えるでしょう。
放送を観た後、あなたの食卓に並ぶマダイやハタハタの見え方は、きっと変わっているはずです。一口噛み締めるごとに、秋田の冷たい潮風と、漁師たちの熱い想いを感じることができる。そんな贅沢な体験をさせてくれる名作回でした。
