1. はじめに:伝説の番組が描く、現代日本の金字塔
かつて日本中の涙を誘い、働くことの誇りを描き出した『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』。その魂を継承した『新プロジェクトX』が、2026年1月24日の放送で取り上げるのは、日本の鉄道史に残る壮絶な難工事**「北陸新幹線・飯山(いいやま)トンネル」**です。
長野と新潟の県境にそびえる山々を貫くこのトンネルは、建設に実に22年という歳月を要し、「魔の山」と恐れられました。なぜこれほどの時間がかかったのか? そこには、近代土木工学の常識を覆す絶望的な地質との闘いがありました。
この記事では、番組の見どころとともに、飯山トンネルがいかにして「不可能な工事」を「半世紀の悲願」へと変えたのか、その舞台裏を徹底解説します。
2. 「魔の山」飯山トンネル:なぜ難工事となったのか?
北陸新幹線(長野〜金沢間)のルート上に立ちはだかった飯山トンネルは、全長22.2キロメートル。一見すると、現代の技術なら容易に思える距離ですが、その内部は「地質のデパート」と呼ばれるほど最悪な条件が揃っていました。
2.1 膨張性地圧:山が「生きている」ように膨らむ
最大の敵は、掘っても掘っても山が内側に盛り上がってくる「膨張性地圧」でした。トンネルの壁面が数メートルも押し出され、強固な鋼鉄の支柱が飴細工のように曲がってしまう。作業員たちは「山に押し潰される」という恐怖と隣り合わせでした。
2.2 メタンガスと高圧湧水
さらに追い打ちをかけたのが、可燃性のメタンガスの噴出と、毎分数十トンに及ぶ高圧の湧水です。爆発事故の危険と、突然の鉄砲水。工事は幾度となく中断を余儀なくされ、「この山を貫くのは不可能ではないか」という声が、専門家の間からも漏れ始めました。
3. 技術者たちの執念:世界初「多重支保工法」の誕生
番組では、絶望的な状況を打破した無名の技術者たちにスポットが当たります。
3.1 「止まれば負けだ」現場監督の決断
トンネルが崩落し、重機が埋まった日。現場に流れた敗北感を払拭したのは、建設主体の鉄道・運輸機構(当時)やゼネコンの技術者たちの「知恵」でした。彼らは、従来の常識であった「固めて防ぐ」のではなく、山の圧力をあえて「逃がしながら支える」という逆転の発想に辿り着きます。
3.2 多重支保工(たじゅうしほこう)の衝撃
これが後に世界的な土木技術として評価される**「多重支保工法」**です。トンネルを二重、三重の構造で支え、山の膨張が収まるのを待ってから最終的なコンクリートを流し込む。この気の遠くなるようなステップを数センチ単位で繰り返すことで、ついに「魔の山」の心臓部を射抜いたのです。
4. 半世紀の悲願:北陸と首都圏を繋ぐ「希望の光」
1970年代の基本計画決定から、2015年の金沢開業まで。北陸新幹線はまさに「半世紀の悲願」でした。
- 雪国を変えた技術: 飯山トンネルの完成により、冬の豪雪地帯を時速260kmで駆け抜けることが可能になりました。
- 経済への波及効果: トンネルという「点」が結ばれたことで、北陸の観光や産業は劇的な変化を遂げました。その土台を築いたのは、光の当たらない地下深部で泥にまみれた男たちの手でした。
5. 『新プロジェクトX』ならではの演出と見どころ
今回の放送(Ch.3 19:30〜)では、当時の貴重な記録映像と、最新の再現ドキュメンタリーが融合します。
5.1 有馬嘉男・中川安奈キャスターが迫る「人間ドラマ」
スタジオには当時の工事責任者らが招かれ、今だからこそ話せる「極限状態での葛藤」が語られます。ただの技術解説ではなく、家族を支えに戦い抜いた一人の人間としてのドラマに、司会の二人が深く切り込みます。
5.2 圧倒的な映像美と「中島みゆき」の歌声
番組のクライマックス、トンネルが貫通した瞬間の映像には、お馴染みのテーマ曲「新・地上の星」が重なります。暗闇を切り裂き、向こう側の光が見えた時の感動は、テレビの前の視聴者にも「明日から頑張ろう」という活力を与えてくれるでしょう。
6. 飯山トンネルがもたらした「土木大国・日本」の誇り
この工事で培われた技術は、その後の北海道新幹線や、リニア中央新幹線のトンネル工事にも多大な影響を与えています。
- 安全性の追求: 崩落の危機を乗り越えた経験が、今の鉄道の「絶対的な安全」に繋がっています。
- 次世代への継承: 番組には、当時若手として現場を走り回った技術者が、今は指導者として次世代を育てる姿も登場します。技術とは、人から人へと受け継がれる「バトン」であることを教えてくれます。
7. 視聴者の声:なぜ今、プロジェクトXなのか?
SNSやネット上では、この放送を前に期待の声が高まっています。
「北陸新幹線に乗るたび、このトンネルを通る時は感謝したい。」 「今の時代、こういう『泥臭い努力』の話が一番心に刺さる。」 「飯山トンネルの存在は知っていたが、22年もかかったとは驚きだ。」
効率やスピードが求められる現代において、22年という時間をかけて一つの目標を成し遂げる物語は、私たちの価値観を揺さぶる力を持っています。
8. まとめ:22.2キロの闇を抜けた先にあるもの
1月24日放送の『新プロジェクトX 半世紀の悲願 北陸新幹線〜飯山トンネルを穿て〜』。 そこには、巨大な岩盤を相手に一歩も引かなかった日本人の意地がありました。
私たちが何気なく利用している新幹線の窓の外、その一瞬の暗闇の裏側にある「22年間のドラマ」を知った時、いつもの旅はきっと、全く違う景色に見えてくるはずです。
番組情報まとめ
- 番組名: 新プロジェクトX〜挑戦者たち〜
- テーマ: 北陸新幹線 飯山トンネル 難工事の記録
- 放送日時: 2026年1月24日(土) 19:30〜20:50(80分SP)
- 放送局: NHK総合・名古屋(Ch.3)
- 出演: 有馬嘉男、中川安奈
- 主題歌: 中島みゆき「新・地上の星」「ヘッドライト・テールライト」
