お正月、食卓を彩る「おせち料理」。日本各地にその土地ならではの味がありますが、**「三重県のおせち」**は一味違います。
伊勢志摩の豊かな海、そして伊賀の山々に囲まれた三重県は、まさに食材の宝庫。今回は、三重県民が愛するおせち料理の特徴や、そこに込められた願いをご紹介します。
1. 三重のおせちの主役!「伊勢海老」
三重県のおせちを語る上で欠かせないのが、なんといっても伊勢海老です。
- 特徴: 贅沢に丸ごと一匹をボイルしたり、焼き物にしたりして重箱に鎮座させます。
- いわれ: 長い触角と曲がった腰の姿から、**「腰が曲がるまで長生きできるように」**という不老長寿の願いが込められています。また、脱皮を繰り返して成長するため、立身出世や発展の象徴ともされています。
2. 夫婦円満の象徴「桑名の蛤(はまぐり)」
北勢地方、特に桑名市周辺で欠かせないのが蛤です。
- 特徴: お吸い物(潮汁)として出されることが多いですが、おせちの焼き物や煮物としても重宝されます。
- いわれ: 蛤の殻は「対(つい)になっている殻以外とは絶対に合わない」ことから、夫婦円満の象徴とされています。一生一人の人と添い遂げられるように、という願いが込められた縁起物です。
3. 東西の交差点!「お雑煮」の不思議
三重県は、実は日本の**「お餅の境界線」**が通る場所としても有名です。地域によってお雑煮のスタイルが劇的に変わります。
| 地域 | 餅の形 | 味付け | 特徴 |
| 北勢・中勢 | 角餅 | 醤油(すまし) | 江戸(東日本)文化の影響が強い |
| 伊賀・南勢 | 丸餅 | 味噌または醤油 | 京(西日本)文化の影響が強い |
エピソード: 三重県内でも、亀山市あたりを境に角餅と丸餅が混在します。「うちは角餅だけど、隣の町に行けば丸餅」という現象が起きるのも、歴史的に東西の交通の要所であった三重県ならではの面白さです。
4. 地域に根付く隠れた名脇役
豪華な食材以外にも、三重らしいお正月食材があります。
- ナマコ(なまこ酢): 志摩地方など沿岸部では、新鮮なナマコを三杯酢で食べるのが定番。その形が「俵」に似ていることから、豊作への願いが込められています。
- ごまめ(田作り): 三重県はカタクチイワシの漁も盛ん。五穀豊穣を願って、甘辛く炊き上げたごまめが欠かせません。
まとめ:神々が愛した美食の地のお正月
三重県のおせちは、単なる料理の詰め合わせではなく、**「海への感謝」と「家族の繁栄」**がぎゅっと詰まった宝箱のようです。伊勢海老の赤、蛤の白、そして地域ごとに異なるお雑煮。これらが合わさって、三重県の豊かで多様なお正月が形作られています。
もし三重県を訪れる機会があれば、その土地のスーパーを覗いてみてください。お正月前には、驚くほど立派な伊勢海老や蛤が並び、御食国の誇りを感じることができるはずです。
