日曜の朝、私たちは再び「旅」を再発見する
日曜日の午前7時。まだ街が眠りから覚めきっていない静寂の中で、あの郷愁を誘うメロディが流れ始めます。「知らない街を歩いてみたい、どこか遠くへ行きたい……」。永六輔さん作詞、中村八大さん作曲のこのテーマ曲を聞くだけで、私たちの心は日常を脱ぎ捨て、見知らぬ土地へと飛び立ちます。今回、老舗旅番組『遠くへ行きたい』が舞台に選んだのは、アジアの玄関口として進化を続けながらも、深い歴史を抱き続ける街・福岡です。
なぜ、今さら福岡なのか? と思う方もいるかもしれません。しかし、今回の旅は一味違います。旅人・別所哲也さんが案内するのは、ガイドブックの1ページ目にあるような表面的な観光地ではなく、その土地の「血通う文化」と「職人の矜持」です。福岡が誇る「あまおう」の真の美味しさ、そして消えゆく幻の技法「截金」に光を当てるこの30分間は、視聴者にとって単なる情報収集ではなく、一つの「体験」となるはずです。
放送概要と番組のアイデンティティ
今回の放送は、**2月22日(日)あさ7:00から、中京テレビ(Ch.4)**をはじめとする日本テレビ系列で放送されます。放送時間はわずか30分。しかし、その30分には数日間にわたる濃密なロケと、制作陣による血の滲むような編集が凝縮されています。
番組の制作を手掛けるのは「田園工房」。彼らの映像作りには定評があり、単に綺麗な風景を撮るのではなく、そこに流れる「空気感」を捉えることに長けています。特に今回は、福岡の活気あふれる市場の喧騒と、静謐な工房で繰り広げられる截金の作業という、動と静のコントラストが見どころ。この番組が1970年から半世紀以上にわたって愛され続けている理由は、まさにこの「誠実な視点」にあるのです。
今回の旅人:別所哲也という「至高のナビゲーター」
旅人を務めるのは、俳優の別所哲也さん。かつて「ハムの人」として親しまれた爽やかさはそのままに、現在は映画祭の主宰者としても活動する彼のリテラシーの高さが、旅をより深いものに昇華させます。
別所さんの旅の魅力は、その「聴く力」にあります。職人に対峙した際、彼は決して自分の知識をひけらかしません。相手の言葉を待ち、その技術の難しさを、自らの五感を通して誠実に表現します。例えば、今回登場する「いち氷」。完熟いちごを削るという贅沢な一品を前にした時、彼はどのような言葉を紡ぐのでしょうか。単に「甘い」「美味しい」ではない、俳優ならではの表現力に注目です。また、門司港のレトロな街並みを歩く彼の姿は、それ自体が一枚の絵画のような気品を漂わせ、視聴者を優雅な休日へと誘ってくれます。
福岡の魅力再発見!本放送のハイライト分析
今回の旅の目玉の一つは、何と言っても福岡が世界に誇るいちごの王様「あまおう」です。しかし、番組が追いかけるのはスーパーに並ぶ姿ではありません。農家の方々がどれほどの情熱を注ぎ、あの「赤い・丸い・大きい・うまい」の4拍子を完成させたのか。その裏側に迫ります。特に、瞬間冷凍した完熟いちごをそのまま削った「いち氷」を食べるシーンは、冬の寒さを忘れるほどの幸福感を与えてくれるでしょう。
さらに、博多の台所・柳橋連合市場(あるいは周辺の市場)で見つけた「白ワインを使った絶品明太子」も聞き捨てなりません。明太子といえば唐辛子の辛味が主役ですが、白ワインを使うことでどのような化学反応が起きるのか。伝統的な食材に現代的なエッセンスを加える、福岡の食の柔軟性が垣間見える瞬間です。そして旅の後半、別所さんは門司港へと足を伸ばします。明治・大正の面影を残す赤レンガの街並みで味わう「焼きカレー」。香ばしいチーズの香りが、画面越しに漂ってきそうな臨場感で描かれます。
職人技に震える:福岡に息づく「伝統と革新」
今回の放送で最も衝撃的なシーンとなるであろう、筑前博多独楽(こま)。無形文化財に指定されているこの技は、単なる遊びの独楽ではありません。日本刀の鋭利な刃先の上を独楽が渡っていくという、神業に近いパフォーマンスは圧巻です。別所さんの驚愕の表情が、その技の凄まじさを物語っています。
そして、もう一つの注目が「截金(きりかね)」です。金箔を数枚焼き合わせ、竹の刀で髪の毛よりも細く切り、それを糊で貼り付けて幾何学模様を描き出す。仏教美術から伝わるこの技法は、まさに「幻」と呼ぶにふさわしいものです。0.1ミリの狂いも許されない極限の集中力。別所さんが息を呑んで見つめるその手仕事は、効率化が叫ばれる現代において、私たちが忘れかけていた「祈り」に近いものづくりの姿勢を思い出させてくれます。
まとめと今後の期待
別所哲也さんが福岡で見つけたのは、単なる観光スポットではなく、その土地に根を張り、伝統を守りながらも新しい価値を生み出し続ける「人々の熱量」でした。あまおうの甘み、明太子の深い味わい、そして職人の指先から生み出される奇跡のような模様。これらすべてが、福岡という街の重層的な魅力を形作っています。
『遠くへ行きたい』は、これからも私たちの代わりに日本中の「本当の宝物」を探し続けてくれるでしょう。この放送を観終えた後、あなたの心にはきっと、福岡への航空券を予約したくなるような、心地よい「旅の衝動」が残っているはずです。
