桑名駅のすぐ隣、西桑名駅から出発する、あのかわいい黄色い電車。「マッチ箱」なんて呼ばれることもありますが、実は日本の鉄道遺産とも言えるすごい路線なんです。
今回は、桑名市在住の私が、三岐鉄道北勢線の魅力と、桑名市との切っても切れない関係について徹底解説します。
1. そもそも「三岐鉄道北勢線」って何がすごいの?
まず、北勢線の最大の特徴。それは**「線路の幅(ナローゲージ)」**です。
日本に3つしかない「ナローゲージ」
新幹線やJR、近鉄の線路幅に比べて、北勢線の線路幅は762mmしかありません。 これは現在、日本の一般営業路線では以下の3路線でしか見られない、非常に貴重な規格です。
- 三岐鉄道北勢線(三重県)
- 四日市あすなろう鉄道(三重県)
- 黒部峡谷鉄道(富山県)
そう、そのうちの2つが三重県(しかも北勢地域)にあるんです! 車内に入ると、両手を広げれば届きそうなコンパクトなサイズ感。向かい合わせの席に座ると、向かいの人との距離が近くてなんだかほっこりします。ガタンゴトンという揺れも、ナローゲージならではの愛嬌です。
ポイント: 電車好きの間では「聖地」扱いされています。桑名市民にとっては日常の足ですが、実はすごい電車に乗っているんですよ!
2. 廃線の危機からの復活!桑名市と北勢線の「絆」
北勢線を語る上で外せないのが、**「存続運動」**の歴史です。
近鉄からのバトンタッチ
もともと北勢線は「近鉄北勢線」でした。しかし、モータリゼーション(車社会化)の波に押され、2000年頃に近鉄から「廃止・バス転換」の方針が示されました。
ここで立ち上がったのが、沿線の自治体(桑名市、東員町、いなべ市)です。 「地域の足を守ろう!」 と協議を重ね、2003年(平成15年)4月1日、地元の三岐鉄道へ運営が譲渡されました。
「公有民営」に近い形での支援
桑名市をはじめとする沿線自治体は、単に「残して」と言っただけではありません。現在も、駅の整備や車両の更新、赤字補填などのために**多額の財政支援(補助金)を行っています。 つまり、北勢線は「三岐鉄道の努力」と「桑名市(行政)の支援」、そして「私たち市民の利用」**という三位一体で走っているのです。
桑名市にとって北勢線は、単なる交通機関ではなく、**「自分たちで守り抜いた地域の財産」**なのです。
3. 撮ってよし、乗ってよし!沿線の観光スポット
北勢線は、西桑名駅(桑名市)から阿下喜駅(いなべ市)までの約20.4kmを結んでいます。桑名市内のスポットを中心に、見どころを紹介します。
西桑名駅(桑名市)
旅のスタート地点。JR・近鉄桑名駅の東口から徒歩数分の場所にあります。 ここの自動改札機は、ナローゲージ用としては世界でも珍しいICカード対応(PiTaPa/ICOCAなど)!レトロな車体とハイテクの融合が見られます。
馬道駅~西別所駅周辺
このあたりは住宅街を走りますが、春になると線路沿いの桜や菜の花が美しく、黄色い電車とのコントラストが映えます。撮り鉄さんにも人気のスポットです。
眼鏡橋・ねじり橋(いなべ市・当駅間)
少し桑名市を出ますが、北勢線のハイライトなので紹介させてください!
- 眼鏡橋(めがねばし): 3連のコンクリートブロック製アーチ橋。
- ねじり橋: アーチがお餅をひねったようになっている、江戸時代の石積み技術を応用した珍しい橋。 これらは土木学会選奨土木遺産に認定されています。車窓からも見えますが、楚原駅などで降りて散策するのもおすすめ。
終点・阿下喜駅(いなべ市)
リニューアルされた駅舎には**「軽便鉄道博物館」**が併設されています。昔の車両が展示されており、毎月第1・第3日曜日にはミニ電車の運行もあります。親子連れに大人気!
4. 黒字化への挑戦!経営状況と営業努力
正直なところ、地方鉄道の経営は楽ではありません。しかし、三岐鉄道と沿線自治体は驚くべき努力を続けています。
パーク&ライドの徹底
桑名市内の在良駅、星川駅、七和駅など、多くの駅に無料(または格安)の駐車場が整備されています。 「駅まで車で行き、そこから電車で渋滞知らずの通勤・通学」というスタイル(パーク&ライド)が桑名市民に定着しました。これは全国的にも成功している事例と言われています。
車両の冷房化と高速化
近鉄時代は「夏は暑くて遅い」というイメージがありましたが、三岐鉄道に移管後、車両の**冷房化率はほぼ100%**に! さらに、線路の改良工事を行い、最高速度を上げて所要時間を短縮しました。この「快適さ」への投資が、利用者減を食い止める大きな要因になっています。
ラッピング電車とイベント
- ヴィアティン三重(サッカー) のラッピングトレイン
- クリスマスの時期の「クリスマストレイン」
- 夏休みのスタンプラリー
など、ただ乗るだけでなく「楽しむ」ための仕掛けを常に発信しています。
5. 知っておきたい!北勢線トピックス
最後に、桑名市民なら知っておきたい小ネタをいくつか。
- 踏切の音が独特 北勢線の踏切の一部(電鐘式)は、「カンカンカン」という電子音ではなく、「ジャンジャンジャン」という鐘の音が鳴るレトロなものが残っています。音の風景(サウンドスケープ)としても貴重です。
- 通学の要 桑名高校、津田学園、桑名北高校など、沿線には学校が多く、朝夕は学生さんで満員です。若者の活気を運ぶラインでもあります。
- 新駅「星川駅」の成功 2005年に移転・開業した星川駅(桑名市)は、商業施設(サンシティ)や病院に近く、利用者が非常に多い駅です。「便利な場所に駅を作れば人は乗る」ことを証明しました。
まとめ:今度の週末は「黄色い電車」に乗ってみませんか?
三岐鉄道北勢線は、一度は消えかけた命を、桑名市と地域の人々の手で繋ぎ止めた奇跡の路線です。
普段は車移動ばかりという桑名市民の皆さんも、ぜひ一度、あえて電車に乗ってみてください。 ガタゴト揺れる小さな車窓から見る桑名の景色は、いつもより少し優しく、懐かしく見えるはずです。
【次のアクション】 今度の晴れた日、お子さんやカメラを持って**「西桑名駅」**へ行ってみませんか? 1日乗り放題の「三岐鉄道1日乗り放題パス」を使って、のんびり途中下車の旅を楽しむのがおすすめですよ!
